3.ファーストインプレッション
瓦礫の上を歩き、崩落した城壁の隙間から頭を覗かせる。城壁内は、思っていたよりも廃れているように見えた。 ほとんどの土塀は崩れており、吹き荒れる突風に巻き上げられた砂塵が容赦なくその身を削り取っていた。一つも無事な民家など無く、どこかしらに傷を負って、ただ朽ちるのを待つのみとなっている。死に逝く都市とはまさにこういうものの事だろう。 一度アレルヤ視線を交わし、城壁をくぐる。手を付いた崩落した城壁の残骸は、手入れされずに長年砂風に晒され続けたせいか、呆気ないほど簡単に崩れた。 周囲に目を配るが、誰かがいる気配は全く無かった。ヴェーダの情報によると、この集落には紛争によって生じた残存兵が、周辺各国から寄り集まって、ひとつのゲリラ組織を形成しているらしい。そして砂漠から訪れた人間を、時に襲い金品を略取し、時に何もせずそのまま手を出さず帰してしまうことも、あるようだ。 ロックオンらがここに訪れる前に、二回エージェントが情報収集に訪れている。一度目は何事もなく帰ることができたが、二度目は、二日前に彼らの到着を知らせる通信を最後に、消息が途絶えている。通信機に付けられた発信器も、その日の夜には全て沈黙した。 発信器の存在に気づいた。もしくは発信器を身につけている可能性に気づいた。油断ならない組織であるといえる。 何より、何が基準で旅人を襲うのかが判っていない。先のエージェントについても、無事帰還した者は都市では特に人影は見なかった、とヴェーダに報告している。けれど、何者かが常にこちらを監視していた、とも。 彼らがそう断言した理由は、都市に足を踏み入れた瞬間に理解した。こちらを窺う無数の視線を全身に感じる。それは、特に殺気は感じず、ただ二人の様子を警戒し監視しているだけのものであったが、城壁を越えた瞬間から一時も離れることもなく存在していた。 「こいつは骨が折れそうだな。」 隣を歩くアレルヤに声を掛ける。当然、アレルヤもこちらを監視する視線には気づいているだろうが、そんな様子は少しも見せずに辺りを見渡す。 「そうですね。思っていたより統率もとれていそうですし。」 「日没までにまだ時間はあるし、少し辺りを散策してみるか。」 あえて声を落とさず、普段通りアレルヤと会話をする。 砂と日差しよけのマントを深くかぶり、改めて今回のミッションの難しさに表情を険しくする。 ミッションの最終目的はガンダムマイスター候補の確保。できるだけ無傷でとのことだが、ロックオンらの身が危険に晒された場合は、ある程度の武力行使も認められていた。 相手は、軍人上がりのゲリラ兵。容赦する気など、はじめから無い。 |