2.回想(映像記録有)








スメラギ・李・ノリエガに、至急ブリーフィングルームに来るようにと館内放送で呼ばれたとき、この退屈な空間から抜け出せることに心底安堵した。現在ロックオンが行っていることといえば、狙撃のシミュレーターを終え、そのデーターを元に技術者らがガンダムデュナメスの調整をおこなっている様子を、邪魔にならないよう遠くから見物しているだけだった。つまり。暇を持て余していたのだ。
そこへスメラギから、呼び出しがかかったのだ。嬉しくないわけがない。



デュナメスの調整をしている技術者らに声をかけ、ブリーフィングルームに向かうと、そこにはスメラギだけでなく、アレルヤとティエリアまでいた。

「ロックオン。ヴェーダから貴方に、新しいミッションがきたわ。」
「俺に?」
「ええ。」

正確にはアレルヤと二人に、とスメラギは肩をすくめた。その瞳に、わずかな影をみて首を傾げる。

「今の時期に、俺たちにミッションが?俺たちになんかあったら不味いんじゃないのか。」

ヴェーダからの予測と、スメラギの予報では、ソレスタルビーイングが世界に武力介入を始めるのは、最低でも二年以内。武力介入を確実に成功させるために、毎日激しいシミュレーションをこなしている今、マイスターである二人に別のミッションを与えるのは、正直どうかと思う。
そう考えていたのはアレルヤも一緒だったようで、同じように異論を唱えるが、「ヴェーダからの指示だ。」というティエリアの発した声に遮られる。

「ヴェーダは常に正しい導を示す。今回のミッションも、ちゃんとした理由がある。」
「理由?」

そうだ、と頷くティエリアの背後で、スメラギは静かに目を伏せた。

「四人目の、マイスターの所在が判明したの。ロックオンス、アレルヤ、貴方たちに与えられたミッションは、その人物を見つけ出し、説得してここまで連れてくること。」

思わず驚嘆の声をあげる。

「見つかったのか。」

最後の、マイスターが。
接近戦に特化した、GN-001ガンダムエクシア。その性能上、戦場で一番に敵陣に斬り込んでいくため最も身を危険に晒し、高度な操縦技術が必要とされるガンダム。そのため、一番最初に完成した機体であったが、今なおパイロットが決まっていなかった。
それが、ようやく決まったようだ。一体どんな奴なんだろうか。

「説得するってことは、ソレスタルビーイングに所属している人間じゃ無いってことか。」
「そうよ。」
「今更新しいクルーを、それもマイスターになる人物が一般人だなんて、どうかと思いますけど。」

アレルヤの意見に、もっともだと頷く。活動開始までもうあまり時間が無い。妥協するわけではないが、ここはソレスタルビーイングに所属するパイロットの中で選ぶ方が、より確実であるように思えた。

「だが、ヴェーダがそう指示をしている。今まで、ヴェーダが間違った情報を流したことはない。今回の情報も、必ず意味があるはずだ。」

ほとんど睨んでいるかのようなティエリアの視線に、肩をすくめる。ヴェーダに傾倒しているティエリアにとって、最も重要な事柄はそれがヴェーダの意志であるかどうかだ。普段から気の強いティエリアだが、ヴェーダのこととなると全く融通が利かなくなることは、短い付きあいながらも知っていた。

「まあ、とにかくそいつを連れて来ればいいんだろ。その後、本当にガンダムマイスターに相応しいかどうか、考えればいいさ。」

ティエリアを諫めようとしているところに、実は、とスメラギが声を上げる。

「問題が一つだけあるの。その人物の、顔も、名前も、年齢も、何も判ってないのよ。」
「え、」

それでどうやって本人を見つけるというんだ。呆れながらスメラギを見ると、困ったように微笑まれた。

「だが、どんな人物かは判っている。」

そうティエリアが言うと、正面のスクリーンにどこかの町の地図が映し出される。それをみた瞬間、既視感に襲われる。

「此処に、四人目のマイスターがいる。」

淡々と語るティエリアの輪郭がぼやけてみえ、声もノイズがはしったように聞き取りずらかった。スメラギの、憂いを帯びた瞳がやけに目に付く。
どこかで見た、建物の配置図。これによく似た造りの都市を、俺は知っている。

「クルジス共和国最北端の都市。そこに存在する組織のリーダーが、四人目のマイスターだ。」

クソったれ。
吐き出した悪態に、有らん限りの憎しみを込めた。