「シリウス!シリウス!!」 「ハリー、よすんだ。…シリウスは死んだんだ。」 そんなわけない。シリウスが死んだ?まさか。嘘だ。だってシリウスは言ったんだ。一緒に暮らそうって。今は離ればなれだけどいつかは、そうだ明日から一緒に暮らそう。薄暗いブラック邸でひとりで寂しかったでしょう。これからはハリーと一緒に暮らそう。そうだ、なんて良い考えなんだろう。だからねえシリウス、早く起きて。 「ハリー、行こう。ここは危ない。」 悲しみに歪んだ瞳でルーピンはハリーの腕を掴んだ。けれどハリーの足は地面と一体化してしまったように動こうとしない。だってシリウスを置いては行けないじゃないか。シリウス、早く逃げよう。一緒にいこう。 「ハリー。」 うるさい離してくれ。シリウスを迎えにいかなくちゃいけないんだ。 腕を強く握られ、ルーピンを睨む。邪魔をするな手を離せ。万感の思いを乗せた瞳を向ける。それを受け止めて、ルーピンは言い聞かせるように口を開いた。 「シリウスは、アイツは逝ってしまったんだ。」 シリウスが死んだ。その事実を受け入れなければならなくなったとき、ハリーは目の前が真っ暗になった気がした。パチンと照明の電気を落とすように、簡単に暗闇がハリーに降り注いできた。足下が見えない。そこにちゃんと地面があるのか確証が無く、一歩踏み出すのさえ恐怖した。 この気持ちは誰にも理解できないだろう。ハリーは確信していた。肉親を失う気持ちは失った者にしか解らない。ハリーには肉親と呼べる人物がシリウスしかいなかった。シリウスの死を認めたとき、心の一部も一緒に死んだ。セドリックが死んだときに感じたのとは違う痛み。肉親を失うことは、心の死だとハリーは知った。 誰もハリーの悲しみを理解できない。だってハリーはシリウスのたった一人の肉親だ。ハリー以上の悲嘆を持つ者はない。そう確信していた。生き残った男の子。悲劇のヒーロー。世界一不幸だ。そう思っていた。 つまり、ハリーは愚かだったのだ。 → |