暗がりにこんにちわ








朝露に濡れた深緑の森のような瞳が、まっすぐと私を捉える。
何故だかどうしようもなくスザクに手を伸ばしたくなったが、なけなしの理性でその衝動を抑えて、静かに彼の言葉を待つ。

「君も僕を置いていくんだろう。」
「そんなことはない。私はスザクを置いていかないよ。」
「嘘だ。」
「嘘じゃない。」
「嘘だ。」

スザクは時々とても不安定になる。
彼の中には私たちには理解できないルールが存在するらしく、そのルールにそって行動する。
それはルールと言うより、掟に近いかもしれない。
そしてそれがなんらかの理由でぶれるとき、スザクはどうしようもなく歪む。
こうして私にそれを吐き出すようになって、スザクの危うさを知った。
どうにかしてやりたい、と思った。
私がスザクの唯一にはなれないと知っていても。それでも。

「君だけじゃない。誰もが、僕を置いていく。」
「スザクは知らないだけだよ。みんな、スザクが大好きだ。私も、アーニャも。」
「知らないのは君の方だよ。僕は望まれなくても生き残る。きっと、ジノ、君を犠牲にしてでもね。」

それでもかまわいないと思った。
スザクが助かるのなら、私の命くらい差し出してもいいと。本当に思っているんだよ。お前は信じてくれないけれど、本気で。
でも、それを言えばスザクはもっと傷つくと知っているから、言葉にせず頭にしまっておく。

「スザクは、それが怖いの?」
「・・・・誰のためにも、僕は生きられないんだ。」

俯きながらそう呟く小さな彼に、ついに耐えきれなくなって、そっと両頬に触れ、顔を上げさせる。
現れた深緑の瞳は、とても渇いていたけれど、月光を反射してとても綺麗だった。
結局衝動を抑えられずに、見えない涙をそっと拭い、優しくスザクを抱きしめる。

「大丈夫だよ、スザク。私はスザクを置いていかない。」


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夢を見た。彼が死ぬ夢。
(独りなど怖くないと思っていたのに。)



080915